マンション管理と税務
■マンション管理組合様へ:国税庁文書回答と今後の対処=駐車場の外部使用と法人課税の実務
平成24年2月、国税庁より、かねてから懸案事項であった、駐車場の外部使用と法人課税に関する回答がありました。その回答により、今後の課税実務に関し影響が出るものと思われます。マンション管理組合様にとっては、大変重要な事項となります。
マンション管理組合と収益事業課税
マンション管理組合は、法人税法上「人格のない社団等」に該当し、課税所得の範囲は、収益事業を営む場合に限定されていますので、その収益事業から生じた所得に対してのみ納税義務を負うものとされています。
収益事業の範囲ですが、法人税法において販売業、製造業その他一定の事業で、継続して事業場を設けて行われるものと規定されており、具体的には34業種が定められています。その中で、マンション管理組合にかかわる収益事業の取引代表例としては、不動産貸付業、駐車場業等が挙げられます。
そこで、今回の国税庁の文書回答に示された駐車場業にスポットをあて、説明いたします。
国税庁文書回答 経緯と影響
- (1)収益事業に係る行政相談
- マンション管理組合法人が管理する駐車場を、 自組合員と自組合員以外の者に貸与した場合に得られる収入の法人税課税について、管轄の税務署に問い合わせたところ、「全収入に対して課せられる」(全部課税)との回答。「自組合員以外に貸与した駐車場から得られる収入」のみ法人税課税の対象とする見解を明確にして欲しい。(H22/1/13 受付)
- (1)収益事業に係る行政相談
- 全部収益事業、一部収益事業及び全部非収益 事業のケースごとの代表的な例を、国交省住宅局 長が国税庁課税部長に宛てて照会、国税庁課税 部長より文書回答がなされた。(H24/2照会・回答)
- (3)照会・回答の影響
- 従前、マンション管理組合が行う駐車場事業に関する税務上の取扱いが不明確で実務上混乱がありました。 今回、全部収益事業、一部収益事業及び全部非収益事業の代表例が示され税務上の取扱いが明確となったことで、マンション管理組合は自組合の収益事業判定を行い、収益事業を行っている場合には申告・納税義務が生じていることが明らかになりました。
駐車場 収益事業判定フローチャート
上記回答文書より、下記の判定フローチャートが導き出されます。
法人課税
マンション管理組合は、法人税法上内国法人である「人格のない社団」として納税義務者とされ、収益事業に対してのみ以下の税目について法人税が課税されます。(法人税法第3条、第4条)
税目:法人税、法人住民税、法人事業税等
なお、基準期間(前々事業年度)の収益事業売上高が1,000万円を超える場合、消費税等も課税されます。
税額をシミュレートなされたい方は、こちらの税額 試算表をご利用ください。
FAQ よくある 質問 と 回答
【法人税・住民税・事業税】
所得金額によって納税額は変動いたしますが、利益に対し実効税率約35%を乗じた額が納税額のひとつの目安になるかと思われます。また、たとえ収支が赤字となった場合においても、住民税の均等割額は納付しなければなりません。
【消費税】
消費税の納税額の計算は、一般的には、売上に係る消費税額から、仕入に係る消費税額を差し引いた金額が納付すべき税額となります。
収益事業とは、法人税法において、販売業、製造業その他一定の事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいいます。マンション管理組合において、駐車場収入、携帯電話基地局収入及び看板・広告料収入等を得ている場合には、これらはすべて収益事業に該当します。
また、今回、国税庁において、「マンション管理組合が区分所有者以外の者へのマンション駐車場の使用を認めた場合の収益事業の判定について」という文書回答が公表されましたので、マンション管理組合において駐車場収入を得ている場合には注意が必要です。
マンション管理組合は法人税法上、人格のない社団等に該当します。 人格のない社団等が収益事業を営む場合、その収益事業から生じた所得に対しては法人税が課税されますので税務申告を行う必要が生じます。
収益事業に直接要した費用の額は、経費として認められます。
また、収益事業と収益事業以外の事業とに共通して要した費用の額は、合理的な基準により按分計算を行い、収益事業に要した費用の額と認められる額について、経費として控除できます。
マンション管理組合において納税が必要となる税金は、法人税、住民税及び事業税です。 また、基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超える場合には、消費税の納税義務が生じます。
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今後の対応
今後につきましては、現在分に対しては進行年度分の税務申告準備にいち早く取りかかる必要があります。また、過年度分につきましても、取扱につきましては十分に精査の上検討する必要があると思われます。
本件についてのより詳しい内容、ご相談につきましては、次の担当部署までお問い合わせください。
直通 TEL:03-5220-5140